図書紹介
「イエス・キリストの生涯を読む」
小川 国夫著 (河出書房新社)
内容は1995年のNHK人間大学のテキストだと書いてありました。僕もその一人ですが、著者は一般信徒にはあまり知られていないようです。信者であり、フランス文学に詳しい新共同訳聖書の編集にも携わった作家なのですが・・・。
この本は新共同訳に不満であった小川が自分なりの翻訳を問おうとしたのではないかと思いました。彼の訳も解釈も一人の私見に過ぎませんが、日本語の作家でありフランス語にも通じていた彼は、翻訳とはどういうものかを問いかけているのではないかと思います。本書の序文で著者は、聖書は面白いと書いています。わたしは新共同訳を読んでも面白いとは感じませんが、本書の中に散在する著者の訳では聖イグナチオの言う「現場の想設」ができるように思います。新共同訳や特に最近の日本語の典礼文は、日常の言葉、口語体ではありながら日常の言葉ではない。自分の言葉ではなく、どうしても他人事になってしまいます。単語を置き換えただけでは翻訳にならない、原典とは全く異質の日本語の場合、特に必要な配慮だと思います。
(ヨハネ 三好)
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