今回の本の紹介は六甲教会や六甲学院を運営しているイエズス会に関するものです。
昨年12月に出された本書は、1908年にイエズス会が日本に再渡来して100年になることを記念して、今までの歩みを振り返りつつ、
現状を見つめながら未来を展望した内容となっています。執筆者は種々の現場で現役で活躍されている司祭たちです。
この本を薦める理由をいくつか挙げます。
@単に百周年を祝う以上に、各執筆者が現在の課題を真剣に意識していること、
A大学での使徒職、中等学校での使徒職、教会での使徒職、社会的な活動の使徒職といった主な活動分野への理解が深められる内容であること、
Bイエズス会を取り巻く状況認識を超えて、日本のカトリック教会が直面している諸課題が明瞭に示されていること、
C私たち一般信徒であっても、それらの諸課題と無縁ではなく、
どのようにこれからの時代を信仰者として生きていくかを考えさせてくれる内容であるからです。
いくつかを引用して紹介しましょう。一つだけ援助修道会のシスターが書かれている文章があります。
「日本の総人口のわずか0.3パーセントを占めるに過ぎない信徒数のカトリック教会は人材も財源も不足し、まさに『小さな群れ』である。
この『小さな群れ』が、イエスの福音を伝えることで日本社会の根源的な渇きを少しでも癒す恵みを得るためには、
まず自らを刷新して生きた信仰を力強く回復しなければならないのかもしれない」(三好)。
川村信三師は「聖霊は自由に働かれる。私たちが必要だと思うことがかならずしも神の望みでないことがある。
・・・『時のしるしを読む』。これほど大切なことは他にありえないだろう。
時のしるしが読めるために、私たちは、いまいちど、謙虚に、先人の歩んできた道を見つめ直し、
ゆくべき方向のナビゲートとすべきであることを強く感じる」と書かれています。
この本はいわゆる「面白い本」ではありませんが、イエズス会の百年の活動を通して、
私たち信仰者のこれからの歩みに関する多くの示唆を与えてくれるものです。
いろいろな集いで一緒に読んで分かち合うことをお勧めします。
(吉村)