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「いま、ここに生きる 生活の中の霊性」

ヘンリー・ナーエン著 太田和功訳(あめんどう社)

  ヘンリー・ナーエンはプロテスタント、カトリックの別なく現代の霊性の師として広く認められているカトリック司祭。1932年オランダ生まれ。ノートルダム大学、イエール大学、ハーバード大学で教えた後、その職を辞して、カナダのトロントにあるラルシュ共同体で生涯の最後の10年間を知的ハンディをもつ人たちと生活をともにした。1996年に死去。

 今から15年余り前に自分が1年間をフランスのラルシュ共同体で生きたことを懐かしく思い出しています。知的ハンディをもった人たちを少しでも手伝えたらといった甘い考えで行きましたが、待っていたものは食事の支度、掃除、洗濯、障がい者の身の回りの世話といった休む間もない日々でした。それと同時に、優しさ、情愛、思いやりなどほんとうに暖かいものを彼らから心いっぱいにもらいましたし、いっしょに生活したいろいろな国のアシスタントとの友情の絆もできて、共同体生活は豊かなものとなりました。

 著者ヘンリー・ナーエンは指導司祭の役割をもっていましたので、共同体のなかでの生活はわたしの生活と同じではなかったでしょうが、知的ハンディをもった人たちから受けたものには似通ったところがあったと思います。著者は「はじめに」こう書いています。「わたしはここで、何か独創的なことを書こうとはせず、わたしにとって本当のことだけを書こうと思いました・・・・ ここにあるすべては、現在のわたしの心と思いのままの表現です・・・・ わたしが心から願い、望むことは、読者の皆さんがわたしとは全く異なった魂の旅路をたどってこられたとしても、ここにある思いめぐらしの中に自分の旅路とどこかつながることを多く見出されることです」

 著者はこの生涯の旅路で出合わすものを、喜び、苦しみ、回心、訓練、霊的生活、祈り、憐れみ、家族、人間関係にわけてあげています。そして最後に「私たちは何者か」という章で結んでいます。このような旅路をたどってきたわたしたちは《神に愛されている子ども》にほかなりません。このことを著者は本の初めから言いたかったのだと思いますが、結論にもってきて読者の心にもっと深く印象づけようとしたのでしょう。

(小南)


 

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