ナウエンは1996年に亡くなりましたが、この著作はナウエンのハーバード大学時代の同僚であったマイケル・オラーリンがナウエンの多くの著書の中から福音書の核心部分について書かれた箇所を編集してまとめたものです。ナウエン好んだ同じオランダ人のレンブラントの素描がたくさん入っていることもこの本の魅力です。
巻頭に「福音のメッセージの全容が示すものは、『イエスのようになる』ということです」と記されています。ナウエンが彼の読者にもっとも伝えたかった思いを簡潔に表している言葉だと思います。
ナウエンは、福音書を読む人たちがイエスと出会うことによって「神の福音との出会い」へと歩み入ることを願っています。ですから福音書の解説をすることよりも、読者がイエスとじかに出会うことが出来るようにと語りかけます。
神の子としての自由を生きたイエスは、私たちにも同じ自由を生きるようにと招かれます。その障害となるものを乗り越えるように招いてくださっていることをナウエンは解き明かしつつ、前に向かって進み行く道を示しています。ナウエン自身が悩みや迷いを受け止めつつ歩んだ中からの心のこもった励ましが書かれています。
ナウエンはカトリック司祭でしたが、その著作の多くはプロテスタントの出版社から日本語訳が出されています。女子パウロ会のものも含めて30冊以上が翻訳されています。日本人のクリスチャンへの大切なメッセージがあります。一読をお勧めします。
(吉村 信夫)