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図書紹介

ベネディクト16世回勅「神は愛」
  
                                    カトリック中央協議会
  時代の変化を踏まえて、その時々の教えが述べられるのが回勅の意義だとすれば、この回勅にも現代の視点が色濃く出ているのは当然といえます。
まず愛について述べられます。「キリスト教の愛は『アガペー』であり、『エロース』は非キリスト教的な愛である」と教えられてきたように思います。しかし、この回勅はエロースを人間の本源的な愛として認めます。もちろん、無規律なエロースは人間を堕落させ、品位を失わせます。浄化されたエロースにはアガペーの要素が入り込み、エロース自身が成熟していきます。現代社会の中で、私たちはエロースを避けるあまり、愛から遠ざかってきた。愛の行為は「カリタス」(回勅の表題の「愛」はカリタスです)として 現れます。カリタスはキリスト教の本性といっていいでしょう。

この回勅ではカリタスの実行の方法について触れています。現代社会の一つの特徴はカリタスも社会的な活動であり、組織的に行われることでしょう。このことを前提にした実際的なアドバイスがいくつか述べられています。国家機関と人道支援団体との関係、教会機関の相互強調、教会外の慈善機関との協力などです。そして組織として奉仕活動を行うスタッフにはそれなりの専門的な教育が必要であると強調しています。また、キリスト教の愛の活動は、政党やイデオロギーから独していなければならない。そして、「改宗の強制」に用いてはならないとしています。

 さて、この回勅の中で強調されていることに、教会と国家の問題があります。この問題は特に第二バチカン公会議以降、教会が一貫して強調してきたことです。「教会は政治闘争を自ら行なうことはできませんし、行なうべきではありません。」しかし、教会は政治に対して傍観者であってはなりません。教会は霊的な指導をなすべきです。そして、公正で正義の行なわれる社会の実現に向けての努力が信徒に要求されています。この点に関して、信徒の反省が求められると共に、昨今の日本の教会(司教団)の政治活動についても懸念を抱かざるをえないのですが…。大変読みやすい本です。一読をお勧めします。 

                                        (桐原)

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