著者川中なほ子氏は、オックスフォード大学で宗教哲学を研究の後、日本の大学で教鞭をとりながら、若者たちに人間のあるべき姿を、キリスト教的観点から教えてこられた。この本は、著者が今まで生きてこられた種々の出来事から、何を思い、何を見出されたかを、また、長い歴史の中で女性にとっては、無理な望みとされてきたものを確立していくことの、神との関わりを語っている。
共著者伊藤春樹氏は、イタリアで精神学を研究され、社会福祉、生命理論について、若者に教えておられる。この本の中で、著者は特に、他者の存在を認識するという重大な点を、新しい価値観をもって社会の中で生かしていくことについて語っている。
読み始められる時、少々難しいと思われるかもしれないが、ゆっくりと読み通されると、非常に大切なものを明晰に、また筋道をつけて、説明してもらったと言えると私は思う。関心をもたれる方のために、簡単に目次を記しておく。
1、 愛の住まい 2、些細なる聖性の偉大さ ― 家政 3、夫は他者
4、性の聖と俗 5、無償でない母性愛(以上、川中氏)
6、歴史につらなる老いた親 − 後悔 1、性と性別の彼岸 2、介護 − 助け、助けられる事(以上、伊藤氏) 3、フェミニスムを超えて 4、女性と文化、女性と自然 5、女性と環境 − 環境のキリスト教的理解 6、女性と人権 7、自由とその限界について 8、共同体論(以上、川中氏)
女性の立場について、真面目に考えたい方に、一読をぜひお勧めしたい。