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故郷(ふるさと)に向かって

 皆様、明けましておめでとうございます。西暦2007年、平成19年という新しい年を迎え、皆様とご家族・ご友人お一人お一人に神の祝福が豊かにあり、心身すこやかで幸多からんことを心からお祈り致します。私たち教会共同体・神の家族が互いに励まし合い、信仰を深める年でありますように! 今年こそ平和な年でありますように! との切なる願いを込めて、新しい年の歩みを始めましょう。

 昨秋、私は生まれて初めて山陰地方の松江と出雲を訪れました。岡山から伯備線・八雲(やくも)号に乗って3時間、中国山脈の山々を超え、あまたの小川や河川を渡り、田畑や湖沼を眺めながら旅をしました。もっとゆっくり走ってほしいと願うほどの、旅愁を満喫させる景観でした。農業、漁業、林業を営む町々村々では過疎化が進んでいましたが、地方や田舎には風情と人情があり、"美しい国・日本"の姿を再発見したような嬉しい旅でした(某総理から表彰状は貰っていません)。神様が創造され祝福された自然の美しさです。人間の英知と技術を駆使し、資本と労働の結果である大都会の人工美とは異なった趣きであり、人間存在の"ふるさと"に辿り着いたという安堵感がありました。資本主義経済そのものを批判しませんが、昨今はその原動力である富と繁栄への欲求が余りにも強いので、家族の絆や命の尊さが軽視されていくのではないかという危惧を抱きます。

 出雲大社の境内を歩いていると、あの広大かつ厳粛なたたずまいの中に日本国の歴史の重みを感じましたが、これから高齢化・少子化へと進む日本の未来を担う若者たちが、どうか良縁と子沢山に恵まれますように! という祈りは切実でした(と云っても、縁結びの神様に参拝はしていません)。出雲教会では昭和40年代に当教会主任司祭であった薄田神父にお会いしましたが、六甲教会のことを懐かしく思い出され、熱い弁舌を久しぶりに伺うことが出来ました。「信徒の方々は、さまざまな理由で教会から離れる時期があっても必ず戻って来られます・・、人間はふるさとへ回帰するのです・・、地上の人生に自分の教会があって本当に助かった! 教会には主の秘跡と神の祝福がある! 昔からの親友もいる! ・・人は魂のふるさとを慕いながら教会に帰って来るものです」と。

 帰りの車中では、大好きな唱歌を何度か口ずさみました。♪♪兎追いしかの山、小鮒釣りしかの川、夢は今も巡りて、忘れ難き故郷。いかにいます父母、つつがなしや友がき・・♪戦時中に木曽川沿いの岐阜の田舎に疎開していた日々が走馬燈のように浮かんできて、今は亡き父母弟のことを思い出しました。涙もろい歳になったものです。そして、私が今生きている時間とは何か?とも考えました。5年〜10年若返りたい、いやもっと昔に帰りたい、できれば家族全員一緒にいた時代に戻りたい・・と。しかし、私たちは二度と繰り返されない時間、決して元に戻れない時間、常に未来に向かってゆく"今"と云うかけがえのない時間を生きているのです。一体、人間存在は何処へ行くのでしょうか。室生犀星は詠んでいます。「ふるさとは、遠きにありて思ふもの・・」と。確かに、そうですね。神の想い・神のみ心を内に秘めている私たちは、神から生まれ神のふところに帰って行く、そのまことの故郷に向かう旅をしているのです。その道すがら、私たちは教会の中で神の祝福と秘跡の恵みをいただきながら、今年もまた新たな未来に向かって出発したいと思います。
忍耐と勇気をもって!

桜井神父

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