待望の桜井神父の著書、『母の遺言』が、パウロ書店より出版されました。日頃、教会報などにお書きになったものを中心にまとめられたとの事ですが、こうして一冊の本として拝読すると、新鮮で改めて心に響くものでした。
薄いブルーを基調に陵麗なタッチで描かれている表紙を開くと、内容は決してホーリィ、ホーリィ一点ばりの固苦しいものではなく、母上の言われた「本物になりなさい」の言葉を、心に刻んで今日まで歩んで来られた、神父のお人となりがよく分かります。
どの章も行きつく先は、全ての人を救われる神の愛ですが、そこへのアプローチの切り口は柔く、多岐にわたっています。例の黄門さんに寅さん、松尾芭蕉や虚子の句があるかと思えば、ユーモラスな川柳もあり、遠藤周作氏に良寛さんにと、枚挙にいとまがありません。中でも抜き出してカードに書いて誰かに送りたくなるような、マーガレット・F・パワーズの「あしあと」、そしてホイヴェルス神父の「人生の秋」の美しい詩も挿入されています。この本を通して、神様の事を知らない人が、一人でも多く教会に足を運んでほしいとの著者の願いが拝察されます。福音を述べ伝える司祭の道を、ある時は演歌に涙し、ある時は童謡を口ずさみながら、星空を眺めて、ひたすら邁進されている神父を天国で見守っておられるお母様は、きっとこの事をお喜びになっているでしょう。
(金子淳子)