日時:2004年9月20日
演題:スペインにおける信仰
講師:ヨンパルト神父様
<要旨>
・スペインと日本は違うところも多い。日本は一応、単一民族であり、標準語は一通りである。ところがスペインは多民族で、言葉も多様であるから標準語も三通りである。東からローマ人、北からはゲルマン民族、南からイスラム教徒(モロ人)、そして7世紀にはイベリア半島はイスラム教徒に占領されてしまった。またユダヤ人も入ってきた。
また、日本にはキリスト教徒は少数であるが、スペインでは殆どがキリスト教徒である。そして昔から「国王には命と財産を差し出すが、霊は神に捧げる。」というのがスペイン人である。
・女性を大切にすることが一般的であるのは、キリスト教の影響が大きい。例えば、懇談している部屋に偉い人が入ってきた時、男性は立ち上がって挨拶するが、女性は座ったままでよい。
・聖ヤコブがイベリア半島まで布教にやって来たということでお墓が作られた。夢にマリア様が現れてお告げがあったので、この場所に大聖堂が建てられた。今でも子供を連れてお参りし、この墓石に接吻する習慣がる。この大聖堂も戦争の時爆撃されたが、爆弾は不発であった。
・中世の黒い伝説と言われているが、宗教裁判で拷問や死刑(火炙り)が行われていた。このようなことは、体より霊が大切であり、異教は霊を汚すと考えていたからである。そして、この刑は国家が執行した。このようなことはヨーロッパ全土で行われており、ユダヤ人やイスラム教徒が対象になることが多かった。
・17世紀、セビリアのイシドーロ司教は、最後の教父として有名である。当時の学問を広く深く研究し、宣教した。このようにスペインには聖人は多い。特に四大聖人として、イグナチオ・ロヨラ、フランシスコ・ザベリオ、アヴィラのテレサ、十字架のヨハネは有名である。前二者はよくご存知である。後二者は神秘的であり、著書はテレサは分かりやすく、ヨハネは深いが難しい。そしてこの2人は共にスペイン文学の最高の著者でもある。
・19世紀から20世紀にかけて、反キリスト教という意味での自由主義や反聖職権尊重主義が強くなって行き、教会不動産の国有化の問題も起こり、スペインは混乱状態に陥る。フランコ将軍のクーデターにより、共和制は民主制へと移行し改善された。併し世俗化は止まらなかった(世俗化とはキリスト教を意識的に排除した思想になること)。現在のスペインはキリスト教の雰囲気は薄くなって来ていて、学校に宗教の授業がなくなり、召し出しも少なくなって来ている。そして社会の治安も悪くなった。
(付記)上記ならびに上記以外にも色々とお話がありました。現在のスペイン、そして世界を観る時、神父様は神様のみこころが人々にもっとよくわかって欲しいと心から願っておられます。理性は人間に与えられた非常に大切なものであり、理性の根源は神様です。ところが、現代は理性を第一として神様を無視する傾向が強くなっています。これは理性を偶像化することであり、反って理性を貶めることになるのではないでしょうか。神父様が日本の布教のために一生を捧げておられることを思うとき、私たちは回心して、もっと祈ることができるようになりたいと思います。
「御名が聖とされますように」
(三日月会コーディネーター)