「俳句的生活」
長谷川 櫂著
中央公論新社刊
著者は、「俳句の宇宙」でサントリー学芸賞を受賞し、現在朝日俳壇の選者の一人である。この書は、17文字から成る地球上で最も短い定型詩の世界のことをご自分の生き方に引き寄せて綴ってあり、私達にも馴染み深い虚子記念館や芦屋市谷崎潤一郎記念館の辺りを詩情豊かに語られている。
芭蕉は俳句故にすべてを捨てて旅立ち、子規は病床6尺の限られた空間の中に生きる意味を見出し病いに耐えた。そして虚子も又戦中・戦後のきびしい時を17文字の中に棒のごとく貫き通した。私は、作句することと観想することはよく似ていると常々感じていたが、著者の俳句に対する思いに接して頷くことが出来たのは嬉しい発見であった。
"何も持たず今すぐ・・・"と聖歌に歌われている通り、俳句にも「切ること」・「捨てること」が要求される。私達は矛盾の中にいろんなものを纏って生きているが、その中で捨てることこそ何よりも求められているようであり、これが著者のいう「俳句的生活」であるようである。
章の区切り毎に子規による草花のスケッチ(図版)がありそれが又楽しい。
(橘 恵子)
※ 図書室のご利用に関しては、 図書室利用のご案内をご覧下さい。
|