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図書紹介 |
『ハイジ』 J・ジュピーリ作/矢川澄子訳 福音館書店 アルプスの少女ハイジというテレビアニメはご存知でしょうか。なぜこんなによく知られているアニメの原作をここで紹介するのかというと、それはアニメと原作では決定的に異なる点があるからです。それは、原作では初めから終わりまで全体を貫くテーマである『祈り』が、アニメからは完全に抜け落ちている点です。例えば、こんな場面があります。フランクフルトの都会から山に帰りたくてしようがないハイジが、クララのおばあさまと話している場面です。 「そう、なんでまた、そんなふうに(お祈りしても神さまは聞き届けてはくれないなんて)思いこんだの、ハイジ?」 「あたし、毎日毎日、何週間もおんなじことお祈りしたの。それでも、何も助けてくださらないもの。」 「そりゃあ、そんなわけにはいかないことよ、ハイジ!何でも自分のおねがいどおりになると思ったら、大まちがいよ。いいこと、神様はわたしたちみんなのお父さまで、何が私たちのためになるか、ちゃんとごぞんじなのよ。おねがいしたって、それがわたしたちのためにならないことなら、かなえてはくださらないの。きっと神さまはね、こう考えていらっしゃるのよ−−うん、ハイジのねがいはぜひかなえてやらなくては。だが、それにはやっぱり時期というものがあって、あの子がほんとによろこべるときまで待たなければ。神さまは、あんたがほんとうに神さまのことを信じて、毎日お祈りをし、何か不満があってもひるまず神さまの方を見上げているかどうか、ちゃんと見ていらっしゃるわけよ。だのにあんたは、すっかり信仰をなくして、お祈りもやめちまって、神さまのことをわすれてしまっていたのね。 (一部省略)」 ハイジは、真剣なようすで、耳をかたむけていました。おばあさまのひとことひとことが、ハイジの胸にしみとおりました。 「あたし、いますぐ行って、神さまにおゆるしをおねがいするわ。そしてもう、二度と神さまをわすれないわ。」 ハイジは後悔して、いいました。 「それがいいわ、ハイジ、時がくればかならず助けてくださるよ、安心していらっしゃい。」 おばあさまが祈ることについてハイジに伝えようとするこの場面は、著者のジュピーリがこの本を読む子供たちに伝えたいことでもあります。ハイジは、このおばあさまや他のいろいろな大人に見守られて、素直に一生懸命にそしてしっかりと神さまを信じていくようになります。そんなハイジの姿は、話を読む私たちをいつのまにか温かい気持ちにさせてくれます。読んだことがない方は、ぜひ読んでみてください。 (三澤 尚久) ※ 図書室のご利用に関しては、図書室利用のご案内をご覧下さい。
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