「生きる」
ホセ・ヨンパルト神父 著 聖母の騎士社 発行
私達は現在生きていることを自覚し、また一人では生きていけないことを知っている。著者は生きている私達が如何にして現在の私になったか、また成長、成熟を経て老い、死に至る人生の意味は何か、さらに私達がたえず追い求めているもの、生き甲斐、生きるための必需品は何か等、生きている私達が考え込む多くのことについて考察を加えておられる。また私達が他の人々と共に生きていくために、皆が必要とし、守るべきルール、法律が作られ、国家がそれを護持する権限を持っていることや法律と道徳の関係、さらに個人は社会のためにあるのか、それとも社会は個人のためにあるのかという問題についても指摘され、現代の日本人が忘れがちな権利に対する義務についても随所で言及されている。そこで本書は社会学、法学を取り込んだ幅広い人生論である。
昔から多くの哲学者、思想家たちが各種の人生論を発表してきたが、そのほとんどはそれぞれの著者の考えを顕示したものである。しかし本書は極めて平易、簡潔に説明され、また結論を出さず、読者に生きることを考えさせる配慮もなされている。そこで若い高校生でも理解でき、且つ彼等に生きる力を与えてくれる。また本書はイエズス会の神父様の著作として、当然カトリックの信仰に裏づけられ、要所要所で読者に神について考えさせ、カトリック信者には自らの信仰を深めさせ、また未信者には信仰を持たせるのにも役立つ。そこで本書はキリスト教の信仰についても論じた極めてユニークな人生論である。
最後に本書は182頁の文庫本であり、現在社会で活躍する多忙な人でも容易に読み終えられる書物であることを付記しておく。(六甲教会の信者は何かとお世話になっており、多忙な壮年や若者も是非一読されることを薦めたい。)
(小林)
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