「いつもだれかが・・・」
ユッタ・バウアー作・絵
徳間書店
ぶらっと入った本屋でわたしの目をひきつけた一行の言葉「5歳から100歳まで、それぞれに深く語りかけてくれる・・・」それは「いつもだれかが・・・(ユッタ・バウアー作・絵 上田真而子訳)」の薄い絵本でした。
ホスピスのベッドの上でおじいちゃんは孫の僕に自分の人生を語ります。「わしは何をしてもうまくいったんだぞ」
この絵本を見る人はほほえまずにはいられないでしょう。何故ならその理由はすぐにわかるからです。おじいちゃんが小さな男の子だった頃、学校へ行く時通る広場の真ん中に立っている大きな天使の像は青い透明な姿になって彼を守り助けてくれていたのです。でも本人は全然気がつきません。バスにひかれそうになると天使は体当たりでバスをとめ、穴に落ちそうになると飛んで来てナイスキャッチ。何ともすごい馬力です。しかもその天使は大きなオッパイをしたおばあちゃん天使です。戦中、戦後の辛い日々も天使は守ってくれました。そして最後まで「わしはとてもしあわせだった」とつぶやくおじいちゃんが天国へと旅立つ時、天使は今度は孫の僕にそっと近づいて来てくれます。夕映えの美しい窓辺でこれを読んでいると私の人生とおじいちゃんの一生とがダブって来ました。「空襲で火の海の中を逃げ切れたのも、戦後の混乱の中で餓死しなかったのも、転職に迷った時勇気づけてくれたのも」よくぞ今日まで生き抜いて来たなと言いたい言葉を思わず飲みこみました。きっと大きなオッパイの青い透明の天使が私の後にもずっとついてくれたに違いありません。
日も落ちて部屋は薄暗く冷えても来ましたが、母のぬくもりを感じさせる思いが胸に広がって行きました。三日月会の方々にも是非一度見て戴きたい絵本です。(一冊図書室にいれておきます。)
(内山)
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