ホーム 六甲教会について お問い合わせ
主任司祭より(8月)

[説教案―(7)日常会話]アメリカの心理学者が書いた“What do you speak everyday?”(あなたは毎日、何を話していますか?)という本は、若者のために興味深いことを示唆していると思いました。即ち、神は天地創造の始めから、日々出会う人々を通して、また大自然を通して語り続けておられるのですが、私達も神の似姿として毎日朝から晩まで何かを語っています。時には、眠ってからも喋り続ける方があるかも知れませんね。私達が毎日話している会話は、大きく分けて4種類のタイプに分けられると言われます。その4つのタイプはどれも大切な話ですが、その(1)〜(4)の順番は人間の出会いと交わりの深さに関係していると思われます。

(1) まず、誰しもが話すのはお天気の話です。この話なしでは、一日が始まらないでしょう。通常は、晴でも曇でもどちらでもよい訳です。実はその内容は、若い人々が好むファッションや食物の話に似ています。これらの内容にはまだ人間が現れていないし利害関係もないので、気楽に話しを始めることが出来るのです。傷つくこともなく、喧嘩にもならないでしょう。

(2) 次に(良い意味でも悪い意味でも)、他人の噂話があると思います。ここで初めて人間が登場します。しかし、話し合っている方々自身のことではなく、まだ他人の事柄です。一般には他人の消息・状態・性格等についての話ですが、いつの間にか他人の批判に繋がる場合がないでしょうか。「あの方は良い人ね。しかし、ちょっとおかしい人よ・・・」といった具合に延々と悪口が続く場合は、後でにがい思いをすることでしょう。また一家団欒のひと時テレビに集中して「あの俳優は・・、この歌手は・・」と噂話に花が咲くこともあるでしょう。しかし、これも程々でないと、折角の家族の交わりと会話が何処かに消えてしまいます。家庭におけるテレビの功罪を見極めましょう。子供達は、親の会話から沢山のことを学んでいます。家庭での会話の中に、他者を尊敬し感謝し、或いは互いに愛し励まし合う言葉がなければ、子供達はそういう事を何処で学ぶことが出来るのでしょうか。

(3) 第三は、自分の持っている知識や情報を話すことです。これは家庭においても社会においても最も多い会話の内容ですが、やっとこの段階で自分自身が現れて来ました。しかし、互いに知り合い、心を通わせ、許し合い受け入れ合う処まで深まっていく過程では、話の内容も“頭の知識”から“心の次元”に進んでいくのではないでしょうか。

(4) 即ち、人間がどうしても話したいこと、聞いて貰いたいことは自分の今の気持だと思います。「私は今、嬉しい・・、哀しい・・、幸せです・・、淋しく辛い気持です・・」等々。即ち、友人間、恋人同士、家族間では、謙虚にまた信頼をもって、ありのままの自分を伝え、かつ相手にそのまま受け容れて貰いたいと願うのが、人間ではないでしょうか。時々、女学生や青年から切実な悩みを聞くことがあります。「自分は気持など話したことがない。親もそんな事には関心が無さそうだし、聞いてくれる友達も無い・・」。そして、悲劇が起こり得るのです。今の時代は忙しすぎるのでしょうか。学校の成績や会社の業績にしか興味がないのでしょうか。愛が失われていく世界にあって、信仰心が薄らいでいく時代にあって、家庭崩壊や人間喪失はどのように回復されるのでしょうか。或る女性が「私の気持を聞いて理解してくれる人が現れたら、結婚したい!」と叫んだことを思い出します。

実は、この四番目の会話は神への祈りでもあると思います。神様にお天気の話や他人の噂・自分の知識を披瀝する人はいないでしょう。むしろ、ありのままの自分を、そして今の自分の気持を伝えるのではないでしょうか。日本語の“念じる”も、読んで字の如し、私の“”を現すことなのです。神様は心の広い方なので、私の今の気持を聞いて理解して下さると確信しています。  

桜井神父
ページ先頭へ ホームへ
 六甲教会について お問い合わせ
(C) Copyright 2002 Rokko Catholic Church. All Rights Reserved.