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図書紹介

『石ではなくパンを』

フェミニスト視点による聖書解釈
E.S.フィオレンツア著/山口里子訳
新教出版


 「女性の視点から見ると世界も人間も異なって見える」と言い続ける女性の声を諸学問は沈黙させてきた。聖書学・聖書解釈も例外ではない。聖書は自己確立、解放などを求めて闘う女性を攻撃する武器として用いられたことも多い。またこの闘いで、勇気、希望、参加への源として女性を支えた聖書の力に著者は注目する。

本著では、その抑圧的な力と解放の力の両方が認識されることを目的とし、批判的な読解とフェミニスト視点による評価という弁証法的なプロセスを経て論議をする際に生じる聖典に関する諸問題が紹介される。
次に、牧会神学、解放の神学、倫理学によって提起されている歴史的、批判的聖書解釈の諸問題について、伝統的学問諸分野や前世紀フェミニストたちの論議を解説し、従来の聖書解釈を弁護や、攻撃排除するのではない第三の立場として、著者が提唱する「注釈学」の説明がある。
最後に、カトリック女性として育った自らの経験で聖書を読んだ背景から、各人が「在る」場でそれぞれの「問いかけ」をして、過去に書かれた聖書から、現在、未来へと生きる力が得られると述べている。

次の二つの言葉に従来とは異なった意義が与えられているのに注意したい。
「父権制」は男性優位社会ではなく、従属と搾取の等級付けを持つピラミッド型の社会であり、「フェミニズム」は、その社会で抑圧、周縁化などに苦しむすべての人を含む。
この定義で読むと、「時代を超えた不変の神の言葉が刻印されている『石の板』という聖典の比喩を、不正と抑圧に対抗して闘う女性たちに神の民としてのエネルギーを与える『パン』と言うイメージに変革していくプロセス」としての「注釈学」が理解できるのではなかろうか。

曽我 邦子



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